「&Premium 10」で本が選ばれたこと
8月20日発売の「&Premium」10月号〜あの人が、もう一度読みたい本〜。
その中の「キッチンで読み返したい、料理の図鑑」で、ブックディレクターの鈴木めぐみさんが、拙書「台所にこの道具」(アノニマ・スタジオ)を選んでくださいました。
これは私が書いた7冊目の本。
2018年11月に出版されました。
それまでは料理家の視点からずっとレシピ本を書いてきましたが、本格的なエッセイを書いたのはこれがはじめてです。
(あ、でも同じ年の5月に「おむすびのにぎりかた」をミシマ社から出版させていただきました。これはミシマ社のウェブマガジンの連載をまとめたものです。)
毎日、眉間にシワを寄せてパソコンに向かった10ヶ月間。
雪がしんしんと降る冬のあいだ毎日毎日、台所道具を見つめながら、ラブレターを書くようにタイプを打ち続けました。何度も何度も書き直し、これでよし、という気持ちはなれず、また書き直おし...。
16道具のエッセイ、道具説明、24レシピ、この3つで構成されていて、それまでレシピ本をずっと書いてきた私としては、レシピ本の製作が楽に思えるほど(いやいや、レシピ本も相当大変ですっ)難しかったです。
あぁ、もっと国語を勉強しておけばよかった...。
この本は台所で料理をするときの
道具に対する姿勢とか、
立ち方とか、
料理と道具の関係とか、
料理の精神性みたいなところを私なりにやさしい文章で書いたつもりです。
台所に立つときはみんなひとり。誰も助けてくれない。
自分を見つめるにはとても良い場所だと思いますから、そこにフォーカスして書きました。
今はSNSの時代ですから、画像や映像に求めるところが大きくて、
料理の見た目の良さとか、おいしいお店のこととか、そんな投稿が喜ばれる。
それはそれで良いのですけれど、
私は料理家として、台所に立つことの意味や、
台所から観た世界を表現したい。
だから「&Premium」に選ばれたのが心から嬉しかった、涙。
自分の仕事を認められたような。大げさかな。でもそんな気持ちになれました。
本は著者が表舞台に出てしまいますけれど、
その裏ではたくさんの力持ちが一緒に仕事をしてくださいます。
まず出版社(台所煮この道具、ではアノニマ・スタジオにお世話になりました)。
そして編集社(毬藻舎)。
デザイナー(いわながさとこさん)
カメラマン(野口さとこさん)、
装丁とイラスト(ダイモンナオさん)などなど。
各分野のプロが懸命に仕事をして、やっと1冊の本が出来上がります。
そして、その本をどこかで誰かが読んでくれる。
時にはこうしてメディアに紹介される。
1本の糸が少しずつ広がり、繋がっていくのが本ですね。
大げさだけれど、生きていてよかったなぁ。
そんな気持ちにさせてくれるのが本の存在です。
ありがとう、ありがとう。